植物

自家不和合性(じかふわごうせい)(Self-Incompatibility)

投稿日:2019年8月18日 更新日:

(農業)(植物)

自家受精が妨げられる性質のこと。異なる個体との間では受精するが、ひとつの個体のなかで花粉が受粉されても正常な受精に至らない。

被子植物種の約半分が、この自家不和合性に該当するとされる。それ以外の多くの植物種は、裸子植物も含めて自家和合性(じかわごうせい)(Self-Compatibility)である。

自家不和合性は被子植物について書かれた文献が多く、おそらく裸子植物では自家不和合性があまり多くないのだろう。つまりおそらく裸子植物の多くは自家和合性なのだろう。

また、裸子植物は被子植物への進化の途中段階であるという考え方があり、つまり被子植物に比べ高等ではなく、「自家不和合性が高等植物でみられる」という文献情報と合致する。

自家不和合性は、遺伝的多様性が生じることや近交弱勢が避けられることで、被子植物が広がった理由として考えられている。

ナシ、リンゴ、サクラソウ、クリ、ヘーゼルナッツなど。

自家不和合性の分類として、遺伝子に着目した配偶体型と胞子体型があり、また花の形態に着目した同形花型と異形花型がある。

配偶体型には同形花型しかなく、胞子体型には同形花型と異形花型がある。

遺伝子に着目した分類 花の形態に着目した分類
配偶体型 同形花型 ナス科、バラ科など ナシ、リンゴ
ケシ科 ヒナゲシ
胞子体型 同形花型 アブラナ科 ダイコン、ハクサイ
ヒルガオ科、キク科 サツマイモ、コスモス
異形花型 サクラソウ科、カタバミ科、タデ科 サクラソウ、カタバミ、ソバ

 

もしも出題で、

Q:「同一品種の花粉を受粉しても受精せず、種子ができないことを自家不和合性という。」といったらこれは○か×か。

とあれば、その答えは、

A:×(同株の花粉で受精しないなら自家不和合性だが、同一品種でも他の個体の花粉を受精しないならそれは自家不和合性ではなく別の理由(病気かなにか)による。もしこの出題例で「同一品種」のところが「同株」なら○。)

となる。

-植物

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

活着(かっちゃく)(Root Taking, Taking Root, Graft-Take, Growing Roots)

(農業)(植物) 植物が、移植後に根付いて生長を続けること。移植後に移植したところで新しい根が伸びて根付くこと。 普通、移植時に根は傷つくが、移植後の新しい根が根付けば植物の生育は回復する。この状態が …

no image

植物の呼吸(Respiration in Plants)

(農業)(植物) 生物の呼吸の定義は不確かな部分があるが、一般的には多細胞の生物体が対外から酸素を取り入れ消費し(変換し)、体外に二酸化炭素を出すことをいい、動物が息をするように植物も呼吸して二酸化炭 …

no image

絹糸(けんし)(Maize Silk)

(農業)(植物) トウモロコシの雌しべ(花柱(かちゅう)もしくは柱頭(ちゅうとう))が長く糸状になったものであり、トウモロコシの苞葉(ほうよう)から外に伸び、受粉する。 トウモロコシの下の実(になる部 …

no image

対抗植物(たいこうしょくぶつ)(Antagonistic Plant, Nematode Suppressive Crops)

(農業)(農法)(科学)(植物)(病害) 作物に有害なウイルス、細菌と菌類、線虫を防ぐ効果がある植物のこと。これらは栽培後に緑肥的に用いられる。 線虫(Nematode)とは、線形動物門に属する生物の …

no image

根茎(こんけい)(Pip, Rhizome, Root, Rootstock)

(農業)(植物) 根(ね)と異なり、茎の地下部分であるところの地下茎の、4分類のひとつ。地中または地表を横に這う。外観は根と似ている。ササ、ワラビ、ハス、ショウブ、ミョウガ、タケ、ドクダミ、ヒルガオ、 …