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蒸散(じょうさん)(Transpiration)

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(農業)(科学)

植物中の水分が、地上部から水蒸気として大気中に放出される現象。

蒸散は主として葉の裏側の気孔から行われ、これを気孔蒸散という。それ以外に植物表面のクチクラ層から行われる蒸散をクチクラ蒸散(Cuticular Transpiration)という。

*クチクラはラテン語cuticularによる。英語ではcuticle(キューティクル)となる。

 

植物は気孔の開閉によって蒸散量を調整していると考えられており、またこのしくみは以下のように考えられている。

気孔開閉の要因 気孔の閉じかた
植物ホルモンのサイトカイニン 土の水分が減ると根から地上部のサイトカイニンが減り、気孔がそれに反応して閉じる。
植物中の葉肉細胞とアプシシン酸 葉肉細胞は植物中の水分量が減るとアプシシン酸を増やし、気孔がこのアプシシン酸に反応して閉じる。
暗いと気孔が閉じる。
二酸化炭素濃度 二酸化炭素濃度が高いと気孔が閉じる。

植物内の水分の上昇の原動力のひとつが蒸散とされるが、これだけでは水分上昇を説明できず他の要因があるとされる。蒸散が盛んなときは連続して水分が上昇し養分も移動できる。

蒸散は、周囲の環境に合わせて体温調節と水分調節を行なう役割を担っていると考えられる。

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